愛する彼にとことん大事にされる……
骨の髄(ずい)まで愛される……
女性なら、誰しも一度は夢見るシチュエーションかもしれません。
しかし、深すぎる愛はある意味、諸刃(もろは)の剣。何かのきっかけで愛情が狂気に変わったとき、それは底知れぬ恐怖となって私たちに襲いかかるかも知れません。
都内の食品メーカーに勤める矢代有紀さん(29歳・仮名)の悩みの種は、「彼氏に愛され過ぎて困っている」ということ。一見「ノロケか!」と思いますが、重すぎる愛は徐々にエスカレートし、彼は「執着心や束縛が激しいメンヘラ男」に変貌。矢代さんの日常を脅(おびや)かすまでになっていったといいます。
「僕は君ナシでは生きられない……!」
「元々私が面倒見がいい性格というか、おせっかいを焼いてしまうタイプ。なので5つ年下の彼にも、平日も家に通って頻繁に食事を作ったり洗たくをしてあげたり……と尽くしていたんです。
昔から彼はどこか精神的にもろい部分がある人だったんですが、付き合って半年が経つ頃に『僕は君がいないと生きていけない』『僕と君は一心同体』と言うようになっていったんです」
彼にとっては矢代さんが自分の一部のようになっていき、身の回りのことだけではなく精神的にも彼女にべったりと依存するようになっていきました。
「彼は一人では生きていけない人でした。仕事でミスしたり嫌なことがあると、どちらかが寝落ちするまで毎晩電話をかけてきたり、休日だけじゃなく『いつも君に会いたい』『会わないことが耐えられない』と少しでも時間があれば家に押しかけてくる。
仕事や友人との予定で会えないときは、『10分置きに連絡して!』と逐一行動を報告しなきゃいけない。ひどいときは、連絡(電話やメッセージ)だけじゃなく、ムービーや写真で『今何してるか送って』と言われ続けていました」

矢代さんいわく、「なぜか彼はとことん自分に自信がない人」。
自己肯定感が極端に低く、「誰かに必要とされたい」「自分を認めてほしい」という思いもあり、それに応えてくれる彼女に依存していったといいます。また、「どうせ自分なんて誰からも必要されていないんだ」という思いも強く、それが「もしかしたら彼女にも裏切られるんじゃないか」=行動を監視しなきゃ! と過度な束縛に繋がったとか……。
愛情が重すぎる彼に、別れを切り出したら……
しかし、そんな過度な束縛や依存に耐え続けられる人はそういません。矢代さんも1年間は耐え続けたものの、ついに限界を迎えました。でも、精神的に追い詰められるほどの“重すぎる彼氏”はそう簡単には別れを受け入れません。
「なるべく相手を傷つけたくないので、『あなたのことは嫌いじゃないけど、愛情が重すぎる』『今後は友達として付き合っていきたい』と、結構オブラートに包んでやんわりと別れを告げたんです。でもそれが彼には効かなかったみたいで……」
彼にとっては、彼女は大事な“依存相手”。そう簡単には手放しません。
「彼の脳内では、『嫌いじゃない=今は機嫌が悪いだけで、僕たちはまだ愛し合ってる!』『友達として=僕のそばにいたいんだね』と変換されたみたいで、別れた後も普通に電話がきたり職場まで迎えにきたこともありました。
見かねた共通の友人が彼に説教してくれたんですが、『誰に邪魔されても、僕は愛を貫くよ!』とメッセージが来て、逆効果になってしまったり……。別れ話があまりに衝撃的だったのか、そこからさらに彼はおかしくなっていったんです」
別れたのに“妄想デート”を繰り返す元カレにア然……!
彼は完全に別れ話に聞く耳をもたず、それどころかSNSで矢代さんの行動を24時間監視したり、執拗に彼氏ヅラをしたコメントを入れ続けるなど、その粘着っぷりは凄まじかったとか……。
「怖いんですよ。もう完全にぶっ飛んでいて、会ってもいないのに『今彼女とデートなう(ハート)』とか一人でデートを実況中継したりするんです。カフェに行っても二人分のカップやランチが映っている写メをアップしてたり、クレープを二つ持っている彼が映っていたり。どれも一人なのに、私とデートしていることになってる。頻繁に私の名前を出しては、友人たちにラブラブっぷりを見せ続けているんです」
もはや、元彼がウザい! だけでは済まないこの話。どこか狂気さえ感じます。 「巧妙(?)なのが、付き合っている頃に撮ったプリクラ画像や、ツーショットの写真を織り交ぜてアップするんですよね。第三者が見れば、あたかも普通のカップル。さらにめちゃくちゃ長文の“私へ向けた愛のポエム”をSNSで書き散らしたり……。
家に押しかけられるとか直接的な被害を受けることはなかったんですが、ある意味ネット上でじわじわと追いつめられて真綿で首を絞められるような感覚。今も彼からの“サイバー攻撃”は続いています」
いつか思いつめて彼の感情が爆発し、犯罪に発展しないことを祈るばかりですが……。 振り返れば、「『なるべくなら悪者になりたくない、彼を傷つけたくない』と、曖昧に別れを切りだしてしまった自分にも非がある」と矢代さん。
矢代さんは極端な例かもしれませんが、そこで中途半端に情を残してしまうと今回のように後々面倒な事態に巻き込まれる可能性も……。やたら「愛してる」だの「離れたくない」など歯が浮くようなセリフを言ってくる男性にも要注意ですが、どんな関係でも別れの場面は傷つくもの。変に良い人ぶらず、きれいごとを言わず、スパッと突きつけることがお互いのためになるのかも知れません。
―自分史上最悪の恋愛 vol.13―
<TEXT/赤山ひかる イラスト/やましたともこ>
女子SPA!
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